義理の母

彼のお母さんは、当時ちょうど80才だった。彼が31才だったから49才の時の子だ。昔は、母親が40代後半で子供を産むと、「恥かきっ子」だなんて失礼なことを言った時代があったと聞く。昔の人は産めよ増やせよの時代だったから、産める時までコントロールすることなく自然に産んでいたのだろう。

子供を授かることは素晴らしいことだと思う。恥かきっ子だなんてとんでもない言葉だ。

当時、私の年齢が若かったからか、彼のお母さんは私にはとても優しかった。ある日、私を呼んで、「貴方達には何も残してあげられないから」と言って、私にダイアの指輪の入った箱を下さった。

高価そうなダイアだった。「これは私の大切な指輪なの。高い、良いダイアなのよ。貴方にあげるわ。息子をよろしくね。」かすれた声で言ったのだ。

義母は、すでに背骨が曲がっていて、小さなおばあちゃんになっていた。今の80才の女性達と比べると、やはり食べ物も違っているのだろう、身体が小さい。この人が、長男の嫁の義理の姉をいびり抜いてきた人なのかと思うと信じられなかった。

なぜか私は義母が好きだった。いつも私に、にこりと微笑んでくれるのだ。テレビのある居間でいつも座っていた。彼女が歩いているのを見ることは稀だった。

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