新婚旅行（伊勢・志摩へ）

彼は、「新婚旅行は忙しくて取れないよ！」と言った。仕事が詰まっているというのだ。

会計事務所の社長はお仲人さんだ。それではあまりに二人が可哀想だから、3泊４日ではと、ということで近くに旅行することになったのだ。伊勢志摩へ行くことになった。彼は、「お伊勢様にお参りに行かないと、うちの家族から怒られるよ！」と言うのだ。

そうだ、彼の実家の家の庭にはお稲荷様があったっけ。世田谷の100坪位の土地に2階建ての家で、部屋は6部屋位あった。お手伝いさんの部屋があって、よくドアーが開いていて、いつも整理整頓され綺麗だったことを思い出す。

私達は古い時代の人間なので、結婚前に食事程度付き合った人がいても決して深い関係になったことはなかった。それが当たり前の時代だったのだ。今とは随分違う。

結婚式が終わり、スーツに着替え、疲れ果てた私達は都内の当時新しかった有名なホテルに泊まった。この日、彼も私も結局何もなく寝込んでしまった。

翌日、三重へ。伊勢神宮へお参りに行った。天照大御神は女の神様だから、男女一緒に行くのはどうかなと彼は言いながらも私達はお参りをした。

そして、観光をした後、私達は「合歓の里」という当時、新しい形の宿泊施設へ泊まったのだ。普通のホテルより興味があったので私からの提案だった。夜、彼は恥ずかしがっていたのか、「疲れたからもう寝るね！」と言ってくるりと私に背を向けた。「あ～、手もつながない初夜なんだ！」

私は「こんなものなんだな～、結婚って。。。」と淋しく感じたのだった。