天井のシミ

そのまま2階の入院病棟に連れて行かれた。ここは町の診療所で🏥、女性4人部屋、男性4人部屋だけの入院病棟だったように記憶している。病棟というより病室だった。1日、24時間動くことができず、ただひたすら天井を見つめる毎日が続いた。医師からは脳内出血左腰骨折で3ヶ月の重傷と告げられた。部屋に入ると左手前が私のベッドだった。そして、点滴、点滴の毎日が始まった。左の腕、右の腕はいつも青のあざが広がっていた。青が青赤へ変わって行く。もともと血液の線が細いためか、看護婦さんが1回でうまく注射針を入れることは稀だった。2回、3回と成功するのに時間がかかった。しまいには、手、足にも注射をしなければならなかった。内出血を緩和するために母がいつも温かいタオルで温めてくれた。

奥にいた痩せたおばあちゃんのベッドの天井には、目立つしみがあって、なぜか毎日、そのしみを見つめることが日常となった。このおばあちゃんはこの診療所の近所に住んでいる方で、目鼻立ちがはっきりし、昔はかなりの美人だったのだろうと感じた。娘さんが毎日通ってきては、世間話をしていく。

よくお手伝いさん👩が話題になっていた。彼女はまだ20歳位の女の子で、何でも家族に喋っちゃうフランクな子らしかった。「あの子ね、キャベツの芯のあたりまで使わないで捨てちゃうのよ、もったいないのよね~。この間注意したけど、全然直さないのよね~」とか、「こたつの中で旦那さんがあの子の足に足をくっつけてくるんだって、この間は、旦那さんに足を触られたって言うのよ~」などなど。どうも何でも容赦なく喋っちゃう子らしかった。この娘さん自身も、何でも喋っちゃう人のようだった、、、こんなことが日常なんだぁ。毎日、天上を向くだけの退屈な日々を送っていた私には、こうした話題を聞いている時こそが外との触れあいの時間だった。それにしてもおばあちゃんは夫が若い子に手を出しているのを聞いてどう思っていたのだろうか。

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