3歳の天然パーマ

三歳の時の私の髪は、くるっくるの天然パーマだ。この時期の髪質はまだ柔らかそうだが、この髪の毛質が私の人生でつらい思い出を残した。小学生になると髪は段々、硬い髪質になった。縮毛と呼ばれる髪質だ。 髪は毎日、朝に晩にとかしていた。いくらとかしても髪は大きく膨らんでしまうのだ。母のヘアークリームを手にとって少しは落ち着くのだが、匂いが強くベタベタしてあまりつけられなかった。

ある日、小学校3年生の時だったか、授業中に担任の先生から、いきなり、『貴方は髪をとかしてないでしょう』と名指しされたのだ。一方的に注意された。毎日とかしていますと大きい声で返すことができなかった。先生は、教室の後ろにあった鏡を指さして『鏡の前に立っていなさい』と言われたのだ。教室の後ろには、鏡の付いた洗面所があった。他の生徒達はその様子を見てクスクス笑っていたり、後ろに立たされた私の様子をキョロキョロと見る生徒もいた。毎日髪をとかしても、私の髪は大きく膨らむのだ。1時限が終わるまで私は鏡の前に立たされた。現代だったら、こんな教師、とっちめてやるのにと思う。私は鏡の前の自分がただ悲しく、恥ずかしくて、でも鏡の前にいなければ許されなかった。この時間がやけに長く感じられた。私はいったいどうすれば良いのだろう。みんなと同じまっすぐな落ち着いた髪ならどんなに良かっただろう。

家に帰ると、母は慰めてくれた。「貴方の髪はね、しょうがないのよね、毎日梳かしているんだけどね」と言われた。母と相談し、髪を三つ編みにすることになった。この担任教師は、E.S.という女の先生で小柄で痩せていて、顔立ちは綺麗な人だったが、少しヒステリックな人だった。ある時、クラスのある男の子にかなり酷く攻撃したことがあった。この子は私より後ろに座っていたため、何があったかわからなかった。何故だったかわからない。この子が忘れものをしたか、その程度のことだったと思う。先生はこの子をひっぱり、『廊下に出て行きなさい!』と言ったのだ。この子は、嫌がり、椅子から降り床に身体を伏せるようにし抵抗したのだが、この教師は決して諦めず凄い声でこの子を罵倒し、廊下に引っ張り出して立たせたのだ。その日だったか翌日だったかもしれない、聞きつけた母親がクラスまで抗議に来た。『酷いじゃないですか、息子が何をしたのですか』と、母親はこの教師とやりあっていたのだ。私達クラスメートの多くは誰もが先生は酷いな、この子は可愛そうだな思いつつ、しかしながら、誰も何も言えず、この頃は教師には、皆一目置いているため、逆らう者は誰もいなかった。

この先生は間もなくお腹が大きくなり、退職した。退職の言葉を全校朝礼で話された時、何か寂しさを感じた。こんなキツイ先生なのに、私にとっては、自分の初めての小学校の先生だったので、いざ退職されることになぜかとても寂しく悲しかったのだ。

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